野田俊作の補正項
             


全員不合格

2013年08月25日(日)


 カウンセラー養成8日間の全課程は終わったが、実技試験合格者は出なかった。半分くらいは合格すると思っていたんだがなあ。話の聞き取りの技術とか、問題の分析とかは、きわめて上手にできている。問題は、「協力的な暮らし」についてのアイデアを持っていないことだ。全員同じところでつまづいている。「あなたの行動の無意識的な目標を分析すると、こういう点が競合的で、それが問題を作りだしていますよね」と、ここまでは美しく分析してくださるのだが、じゃあ、どうすれば協力的になって、相手と力を合わせて問題を解決できるのかということになると、アイデアが出てこない。つまり、共同体感覚というものが、実感としてわかっていない。

 試験の後で、私が、「たとえばこんな風にしたら?」というと、みなさん「なるほど」と納得される。それほど珍しいことを言っているわけではない。人と人とが尊敬しあい信頼しあい協力しあって暮らしているなら、当然そうふるまうような、いわばごく常識的なことだ。それが受講生にはわからない。さいわい、言われるとわかるのが救いだ。

 いったいどうしたことなんだろうね。日本文化そのものが「協力する」とか「力を合わせる」とか「助け合う」とか「一緒に考え一緒に働く」ということをやめてしまったんだろうか。まあ、そういう気がしないことはない。この夏は、夏バテがひどくて映画をたくさん見たんだけれど、ある時代から日本映画の雰囲気が変わる。黒澤明の映画なんて、アドラー心理学がイメージする共同体感覚とはまったく違うものを「協力」だとか「助け合う」だとかと考えている。映画に関してだけ言えば、日本映画の暗黒時代であったといえばいえなくもない「日活ロマンポルノ」と呼ばれた一群の作品が作られた、1970年代が転換点になったのではあるまいかと疑っているのだが、そんなにたくさん見たわけではないので、ただの想像だ。無縁な人々がたまたま出会って、一時的に関係を結んで、また別れていく、そういう人生像が、その時代にできたんじゃないかな。その時代に生まれた人たちが受講しているわけで、共同体が崩壊した時代の子どもたちであるわけだ。

 なにはともあれ、一人も合格者が出なかったので、すっかり落ち込んでいて、しばらく鬱状態ですごすことにする。まあ、そのうち対策を思いつくでしょう。