野田俊作の補正項
             


アドラー心理学育児について

2014年12月01日(月)


本日の読書
 お医者さんの日だったが、患者さんも少なく「濃い」人もおらず、暇だった。月曜日の休みが多いので、ひどく混む日と、暇な日が、混在している。

 流山での育児プログラム(Passage Plus)に参加して下さった方が、 mixi に感想を書いてくださった。(私と直接におしゃべりしたい人は、mixi が便利です。FaceBook は使いにくい。ただし、 mixi は匿名なので、よく知っているしかお友だちにしません)。その中に、

 プラスはというと(中略)『とりあえずやること・できること』に飛びつかず、そこに至るまでのロジックを丁寧に見て、考えて、推測して、探る…見直す…。だから矢印は自分に向いていて、パセージみたいなカタルシスを即座に感じることはない。なんだかプラスの学びは、一生かけて自分のたゆまぬ精進にかけて、 少しずつ紡いでいく学びのようで、『プラス受けてわたし変わったの!』 なんて早速言っちゃう方がおこがましい気がする。

と書いておられた。古い方(Passage)では、3つの仕事をする。すなわち、1)まず、育児の目標を確認する。「行動面の目標」と「心理面の目標」というのだが、以後は、主に心理面の目標、「人々は仲間だ」と「私は能力がある」を中心に学んでいく。ちなみに、ある人の本に、「人々は仲間だ」とか「私は能力がある」とかを、アドラー心理学そのものの目標だというようなことを書いてあったが、それは間違いで、これは Passage の中で私がはじめて提唱したことだし(だから引用するなら、私の名前、あるいは『パセージ』、への言及がほしいものだ。学者のマナーだと思うな)、また、相対的プラス(子どもの性格特徴)の側を触らないで相対的マイナス(子どもの劣等感)の側を触るための技術的な工夫であるにすぎない。アドラー心理学の目標は、アドラー以来一貫して、「共同体感覚の育成」だ。(ただし、 Passage では、それは前面に出ない)。

 2)次に、それと関連させて、いままでやってきたことでやめなければいけないことは何かを学んでもらう。すなわち、過干渉と過干渉を防止するために、「課題の分離」という操作をする。これまた、ある人の本の中に、まるで課題の分離がアドラー心理学の技法の中心部分であるかのような書き方がしてあったが、そうではなくて、これは「共同の課題」を作れるようになるための準備であるにすぎない。アドラー心理学育児の目標は「家族がすべての課題を協力的に解決できるようになること」で、その「協力」のひとつの形として、ある課題については共同で解決しないで子どもに任せる、ということを「課題の分離」と言っているのだと考えることもできる。もっとも、これは Passage が終わってから振り返ればそうも言えるのであって、課題の分離を学んでいる時点では、まだそういうパースペクティブはないので、誤解するのかもしれない。課題の分離だけしていたら、放任育児になってしまう。しっかりと共同の課題を作って、一緒に解決していって、はじめてアドラー心理学らしい生活になる。

 3)次に、協力的な親子関係を築くためにさしあたってできることを学んでもらう。話の聴き方とか、どういう課題は共同の課題にできるかとか、そのためにどういう手続きが要るかとかだ。この作業の半分くらいのところで、Passage は終わる。というのは、そこから先の作業は、陰性感情を使わないで育児ができるようにならないと、実践できないからだ。また、そこまでに学んだことで、さしあたってはやっていけるようになるからだ。

 Passage Plus は、Passage を受けた人が、すくなくとも半年は、Passage の子育てを実践していることを前提にしている。そこでは、3つのことを学んでもらう。1)ひとつはエピソード分析で、自分自身の行動の目標を洞察できるようになる。それにともなって、陰性感情の制御を学ぶ。2)次に、親の考えや価値観を、どのようにすれば安全に子どもに伝えることができるかを学ぶ。これは、親が支配性(=競合性)を脱却していないとできないことだ。だから、Passage では十分に教えることができなかった。3)そして、「子どもを理解する」というのがどういうことかを学ぶ。しかし、この作業が完成しないうちに、コースは終わる。後は、学習グループで継続学習をしていくことを期待している。

 Passage Plus ができたことで、非専門家に必要なアドラー心理学の知識の全体像を説明し終わったと思う。後は、ライフスタイル分析の方法だとかカウンセリングの技法だとか、専門家だけに必要な知識だけが残っている。私の方はやれやれで、すっかりくつろいでいるのだが、実際の仕事はこれからで、できるだけ多くの人々に Passage と Passage Plus を受けてもらわなければならない。そのためには、たくさんのリーダーさんを作らなければならない。そのためには、私の方は、肉体労働がたくさんありそうだ。いつも言うけれど、アドラー心理学は本では学べない。実際に、師匠について実習する必要がある。ようやくそのための準備が整った。仕事はむしろこれからだ。

 そうそう、仲町六絵さんの小説『からくさ図書館来客簿』の第3集が出た。作者は長くアドラー心理学を学んでおられるので、あちこちにアドラー心理学的アイデアが顔を出している。だまし絵のように埋め込まれているので、見つけ出すのが楽しい。